お芝居での距離について
お芝居をしていて、難しいものの一つに『距離感を表現する』というものがあると思います。
距離感を出す、というのは・・・しかもお芝居をしながら・・・近い距離でも遠い距離でも・・・結構難しいものだと考えています。
例えば
「1km先の遠くの山に向かって叫ぶ」
というト書きがあったとすれば、それを演じなくてはいけません。
しかし、実際、1km先の山、というのは劇場に存在させることは難しいです。
お芝居の根本は役者さんのイメージであろうとぼくは考えております。
如何に1km先にある山を詳細により明確にイメージを作るかということが重要になってきます。
そこで、「距離」という意味のみで考えますと…大事になってくるのが、どれだけ遠くにイメージできるかということなのですが、これがなかなか上手くいかない時があります。
結論から言えば、イメージ上の遠くの山に視線を向けることによって、距離というものを意識できます。
何故ならば、人間が距離を測る場合、その多くの情報は目から入ってきます。
その目、視線をイメージにそって向けることによって、より意識は距離を考えるようになります。
お芝居での’距離感’と拳銃の『照準』
この距離感というもの・・・
ぼくは拳銃の照準がイメージしやすいのではないか、と考えています。
おもちゃの拳銃でも、お祭りの際の射的でも、アーチェリーでも弓矢でも良いのですが・・・
遠くの標的を狙おうと思ったら、よく照準をつけて、当てようとします。狙いを定める、といった感じです。
反対に近くの標的を撃とうと思ったら、距離にはあまり意識がいかないのでないでしょうか。よく狙う、というよりも、近くある的ですと・・・見てはいますが・・・狙わなくても撃てます。
そうなのです。距離を意識する第一歩はその目標を見る、ということなのです。お芝居中に対象となるモノ(他の役だったり、装置だったり、道具だったり…)へ、どのように視線を向けるか、が、距離を出す第一歩なのです。
その上で、どんな台詞をしゃべるのか…はっきりしゃべるのか、ぼそぼそしゃべるのか…(拳銃で言えば引き金を引く行為かと思いますが)…台本のシーンや役によってきます。やくによってきますが…まず距離のイメージを明確にするためには、視線の向き、方向、狙いが大事になってくるとぼくは考えています。
そして色々な側面から…
お芝居での距離を出すものは、役者さんのコントロールが大部分を締めます。
しかし、その距離感は、
・お客様が感じる距離感
・演出家や脚本家が考える距離感
・役者の表現する距離感
・音声が表現する距離感
・役どうしの距離感
・役とモノとの距離感
などなど・・・色々な側面の距離感が同じ物語の中に存在します。
無論、全てを完全に同じすることはできないですが…しかしながら、これらの距離感がピタッとはまる瞬間があるとぼくは考えています。